メルセデス・ベンツやBMWのFR,FF,RR,MRの前後重量配分の違いと特徴

メルセデス・ベンツC200-W205

メルセデス・ベンツの前後重量配分

メルセデス・ベンツの前後重量配分はFR(フロントエンジン・リヤドライブ)の場合、車種にも違いがありますけど概ね「Front 53 : Rear 47」前後。

BMWの前後重量配分は伝統的に「Front 50 : Rear 50」。

この両社の違いが興味深いところ。

FRやFFは一番の重量物であるエンジンがフロントに搭載されていますから、自ずとフロントが重くなります。

FRの場合、フロントが重くなると、リアタイヤの荷重が減少してトラクション性能に影響を与えます。

かと言って、メルセデス・ベンツはBMWのように前後50:50を採用しないことからも、操縦安定性やドリフト時のコントロール性、居住性等を総合的に勘案して決定しているのでしょう。

しかも、メルセデスやBMWは、重量物であるバッテリーの搭載位置がよく考えられています。車種にもよりますけど、エンジンルームのキャビン寄りの位置やトランクルームにバッテリーが搭載されていることが多いのが特徴です。

オーバーハング部分(タイヤの中心からバンパーの先端まで)になるべく重量物を搭載しないように設計されていることからも、慣性マスの集中化がよく考えられています。

【前後重量配分の計算方法】

車検証に「車両重量」と「前前軸重」の記載があります。一例として、車両重量1,500kg、前前軸重800kgでしたら、

800kg × 1/1,500kg = 0.5333…

車両重量に対する前前軸重の割合は53%。よって、後後軸重の割合は47%です。

BMWの前後重量配分

BMW 3シリーズ

BMWのFRの前後重量配分は伝統的に「Front 50 : Rear 50」

BMWのキャッチコピーは「駆けぬける歓び」ですから、伝統的に前後重量配分に拘りを持っているメーカーです。

BMWのエンジンフードを開けると、エンジンが可能な限りエンジンルームの後方(キャビン寄り)に搭載されていることが分かります。そこで、BMWはモデルにもよりますけど、重量物であるバッテリーがトランクルームに設置されていることもあります。

自動車にとって、理想的な前後重量配分が「50:50」なのかどうかは、エンジニアの領域の話になります。BMWらしい走りを実現するためには「50:50」がベストなのでしょう。

なお、エンジンをキャビン寄りに搭載すると、トランスミッションも押し出されて後方に移動します。結果的に、フロントシートの足元が狭くなってしまうトレードオフの関係にあります。

FFの前後重量配分

TOYOTAプリウスZVW30系

多くのFF(フロントエンジン・フロントドライブ)の前後重量配分は「Front 60 : Rear 40」前後。

HONDAのオフィシャルサイトには、FFの理想的な前後重量配分はFront 60 : Rear 40とありますから、これが黄金比率に近いのでしょう。

FF車はフロントタイヤを駆動しますから、フロントタイヤにある程度の荷重を与える必要があります。かと言って、フロントが黄金比率以上に重くなると、ハンドリングに影響を及ぼします。

フロントがやや重いFRとFFは、一般のドライバーにとってコントロールしやすい前後重量配分です。また、ラジエーターとコンデンサーをフロントグリル内に設置することで、冷却が容易です。

更に、エンジンが横置きのFFはキャビンが広く、プロペラシャフトが不要です。

なお、リヤが軽いFFは、急制動時にリヤタイヤの荷重が減少しやすくなります。よって、ブレーキ性能や緊急回避性能では、他の駆動方式の車両より若干不利と言えます。

4WDの前後重量配分

SUBARU WRX-STI

4WDの前後重量配分は「Front 60 : Rear 40」前後。車種によって多少の幅があります。

絶対的なスタビリティで優位な4WD。

4WDはμの低いウエット路面や雪道、オフロードでのスタビリティが高く、走行安定性が高い特徴を持ちます。

なお、本格的な4WDは前後にデフ、センターデフを搭載することもあり、部品点数増加による重量増がデメリットではあります。

RRの前後重量配分

ポルシェ911GT

RR(リヤエンジン・リヤドライブ)と言えば、真っ先にポルシェが頭に浮かぶことでしょう。RRの前後重量配分は「Front 40 : Rear 60」前後。

この前後重量配分は、FFと逆です。

RRのエンジンはリヤに搭載されていることもあり、リヤタイヤのトラクション性能は抜群です。しかも、急制動時、荷重が軽いフロントに加わりますから、4本のタイヤに適切な荷重がかかりやすくなります。

よく、RRポルシェのブレーキは世界一と評価されます。勿論、ポルシェは高級なブレーキシステムを採用しています。もう一つの理由は、前後の重量配分が大きく関係していると考えられます。

なお、フロントが軽いRRはコーナーのターンインでアンダーステアが出やすく、リヤタイヤが流れ出したら、なかなか止まらない物理的な運動特性を持っています。RRのオーバーステアは危険であるため、ポルシェのリヤタイヤはフロントに対して極太です。

また、RRはフロントが軽いため、太いタイヤはウエット路面でハイドロプレーニング現象が発生しやすく、雨の高速道路は得意とは言えません。

MRの前後重量配分

フェラーリ458

MR(ミッドシップエンジン・リヤドライブ)の前後重量配分は「Front 40~45 : Rear 60~55」あたり収まっています。

ピュアスポーツカーの理想はMRで2WDと言われます。MRの場合、キャビンの直後にエンジンを搭載する以上、RRほどではないもののリヤが重くなります。

MRは自動車の旋回軸の近くにエンジンを搭載しているため、最も運動性能が高い方式です。よって、世界のスーパースポーツカーの多くはMRを採用しています。

なお、フロントが軽いMRはRRと同様、コーナーのターンインでアンダーステアが出やすく、リヤタイヤが流れ出したら、なかなか止まらない運動特性を持っています。MRのオーバーステアは危険であるため、MRのリヤタイヤはポルシェと同様、フロントに対して極太です。

また、MRはRRと同様、フロントが軽いため、ウエット路面でハイドロプレーニング現象が発生しやすく、雨の高速道路は得意とは言えません。

日本のMR、三菱自動車 i(アイ)

かつて、三菱自動車がアイ(i)という軽自動車を製造していました。

メーカーのカタログによると、iはMR。実際、iのエンジンマウントの位置からもRRに近いMRです。iは軽自動車としては異例とも言える凝った設計が与えられ、生産中止になっている今でも、コアなファンに支持されています。

ちなみに、iの前後重量配分は「Front 45 : Rear 55」。

 三菱自動車 i(アイ)

最後に

エンジンの搭載位置と駆動方式(FR、FF、4WD、RR、MR)によって、前後重量配分と特徴にかなりの違いがあります。駆動方式によって、その自動車のパッケージングとキャラクターがある程度、決まってしまいます。

RRとMRはスポーツカーに特化した駆動方式ですから特殊です。

4名以上の乗車定員を確保するためには、FR、FF、フロントエンジン4WDのいずれかを採用することになります。

日本車の多くはFFです。

FFはメーカーとユーザー共に多くのメリットがありますから、大衆車に適した駆動方式として定着しています。フロントが重いFFは直進安定性が高く、雪道でも運転が楽という特徴があります。

しかし、走る、曲がる、止まる性能を高次元でバランスさせるには、FFの限界点も見えてきます。フロントタイヤの操舵という仕事に駆動の仕事をプラスしても、タイヤの摩擦円には限界があります。

しかも、車の加速時、リヤタイヤの荷重が増えますから、反対にフロントタイヤの荷重は減少します。この時、フロントタイヤのトラクションが低下します。

エンジンパワーが低い車であれば、FFで十分です。しかし、FFにハイパワーエンジンを搭載すると、物理的に無理が多い自動車になるのは否めないでしょう。

その点、メルセデス・ベンツやBMWのクルマづくりの基本はFR。

自動車に求められる複数の要素を高次元でバランスさせるためには、FRが最適解ということになります。メルセデス・ベンツもBMWも、自動車にピストンエンジンを搭載する以上、今後もFRが基本でしょう。

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