ボディ剛性が高いメルセデス・ベンツの秘密とは?乗り心地にも寄与

メルセデス・ベンツCクラスW205ボディ骨格

自動車の開発やボディ設計部門で働いている方々を除き、一般の自動車オーナーはボディ剛性という性能を目で確認したり、手で触って確認できません。

車のボディが弱いと、コンビニやGS等の敷地に入る歩道の段差で内装部品が軋む音が出ます。あるいは、走行中、ボディパネルから音が出やすくなります。

ボディが弱いクルマで雪道を走行すると、車体の落ち着きが無く、タイヤのグリップ感が分かりにくく安心感を得られません。

多くのボディ剛性に関する情報はドライバーが受ける感覚的なものが言葉や動画で表現されています。

ボディ剛性を手で感じてみる

ここで、ボディ剛性というものを手で感じ取る方法として、ちょっとした工作で自動車を作ってみると分かりやすいと思います。

「じゃ、どうすれば?」

となります。

そこで、無料のペーパークラフトを利用するのが手っ取り早いです。

ペーパークラフト

検索すると自動車のペーパークラフトのページが複数ヒットします。

日産自動車のオフィシャルサイトに豊富なペーパークラフトのWebページがあるため、利用すると便利。検索キーワードは「日産 ペーパークラフト」。

こちら。

日産:ペーパークラフト

[工作に必要なもの]

  • ハサミ
  • カッター
  • のり
  • インクジェットプリンターで印刷可能な厚紙

どこの家にでもある物。

印刷したら、ハサミで大まかに切っていきます。細かな所はカッターを使用した方が楽です。

管理人は普通のコピー用紙に印刷しました。しかし、紙が薄いため、のり付け作業が少々やりにくいです。

できれば、少々、厚手の紙に印刷した方が作業がやりやすくなります

そして、完成したペーパークラフトがこちら。

完成!?

ペーパークラフト(救急車とスポーツカー)

のり付けがかなり「雑」ながら、ご容赦ください(^^)

黄色のスポーツカーのボディ形状はクーペ。そして、救急車のボディは1BOX。写真を見ていただくと、救急車のバックドアはのり付けしてありません。実車と同じように開閉できます。

ボディ剛性の違い

なにぶん、コピー用紙で作ったペラペラのペーパークラフトのため、手でボディを触ると剛性は低いです。ただ、スポーツカーと救急車のボディを軽く捩ってみると、明らかにボディ剛性の違いが手に伝わってきます。

2車のボディ剛性を比較すると、救急車の車体後部の剛性が低く感じられます。車体が簡単に捩じれてしまいます。

もちろん、実車のボディ骨格は鋼板を複雑な形状にプレスして、スポット溶接してあるため、ペーパークラフトと同次元で比較はできません。

「これじゃ、子供だましでは?」

とツッコミが入るかもしれませんが、イメージはできるのではないでしょうか?

クーペと1BOXのボディ剛性

大まかなイメージとして捉えると、1BOXやミニバンのボディは開口部が大きいバックドア周辺のボディ剛性が低下しやすいことがイメージできると思います。ワゴンボディも同様。

自動車のモノコックボディは、あたかも「究極の折り紙」のようなイメージで、鋼板に山と谷を作り、曲げ、場所によっては板厚を増やすことで剛性を確保しています。

それでも、ボディ形状によって剛性に違いが出てきます。

セダンやクーペボディはボディ剛性を高くできる傾向があり、ワゴンや1BOXボディは剛性面で不利になることはイメージできるのではないでしょうか。

セダンとワゴンボディを比較

メルセデス・ベンツCクラスW205ボディ骨格

メルセデス・ベンツCクラスW205ワゴンボディ骨格
(出典)NetCarShow.com

メルセデス・ベンツのラインアップは歴史的にCクラスとEクラスにワゴンモデルを設定しています。ここで、Cクラス、W205のセダンとワゴンの車両重量をチェックしてみます。

 Cクラスセダン/ワゴン(W205)メルセデス・ベンツ日本オフィシャルサイト

セダンとワゴン共に、C200 AVANT GARDEを選択して車両重量を比較してみますと、セダンは1,540kg、ワゴンは1,600kg。両車共にエンジンと装備はほぼ同じ。

ワゴンはセダンより少々重くなります。

ワゴンボディはセダンよりガラスの面積が増加し、リヤゲートがありますから、重量増の要因です。しかし、それにしてもプラス60kgの意味は何でしょう?

かつて、CクラスのW203やW202でも同じような傾向が見られました。

これは、あくまで想像の域を出ないのですが、メルセデスはワゴンボディに追加の補強を施しているのではと思えるのです。

これにより、リヤに大きなバックドアを持つワゴンの開口部周辺のボディ剛性を確保しているのでは?と勝手ながら推測しています。

メルセデス・ベンツがボディ剛性に拘る理由

メルセデス・ベンツCクラスW205ボディ骨格

(出典)NetCarShow.com

ボディ剛性が低い自動車にハイパワーエンジンを搭載し、サスペンションを固めても、そのクルマの本来の性能を発揮できないことがほとんど。どちらかと言えば、直線番長的な車になります。

かつて、管理人の友人や知人の中にはタービン交換やブーストアップ、車高調サスペンションで決めているオーナーがいました。

しかしながら、ボディが負けてしまっていることもあり、ドアが閉まりにくくなったり、リヤハッチゲートがガタついたり、フロントサスペンションのアッパーマウント周辺にクラックが入ってしまうこともあります。

ボディに想定外のストレスが加わり続けると諸問題が発生し、投資したコストに見合った性能を十分に引き出せないというジレンマに陥ることがあります。

その点、メルセデス・ベンツは歴史的にボディ剛性に拘る自動車メーカー。伝統的にAMGの存在があるため、大パワーを受け止める強いボディが必要です。

CクラスのW204、W205のボディは岩のような剛性感。走行中、ボディの存在を忘れてしまいます。ボディ剛性は高いほどメリットが多くなります。

ボディ剛性を高めることによるメリットは走りの質が高まり、同時に安全性も引き上げることができます。

走りの質

メルセデス・ベンツCクラスW205
(出典)NetCarShow.com

自動車は停止状態から発進、加速、減速、コーナリングを繰り返しています。自動車のボディは走行中、ピッチング、ローリング、ヨーイングだけではなく、ダイアゴナルの動きも加わります。

ボディは4つのサスペンションの上で路面変化によって姿勢を変え、加速、減速、コーナーリング時に姿勢が変化します。ボディは走行中、あらゆるストレスを受けているため、ボディ剛性が低いと車体が捩じれて変位します。

ボディが変位すると、サスペンションが設計どおりに動かなくなるため、これはクルマの挙動変化として現れます。

また、サスペンションの取り付け部周辺やアーム類の剛性が低いと、コーナーリング時に動的なアライメント変化が発生し、ホイールとタイヤにポジティブキャンバーが付いてしまいます。所謂、キャンバー剛性が低いのです。

これにより、タイヤの接地面積が減少するため、タイヤが本来持っている運動性能を引き出すことができません。

これらの現象はドライバーにとって車の挙動変化として感じます。これは、予期できないクルマの動きなのです。そこで、ドライバーはその瞬間、ドキッとするのです。

多くの市販車はアンダーステア気味にセットアップされています。

コーナーリング中の路面変化や加速、減速中に突然アンダーステアが発生したり、車体の挙動が乱れる場合、サスペンションの性能はもちろん、ボディ剛性が不足している可能性が高いでしょう。

自動車には車両安定性制御装置(横滑り防止装置)が搭載されています。車体の挙動変化が発生した瞬間、電子デバイスの制御が働いて、可能な限り車体を安定方向に戻すように制御してくれます。

しかし、それ以前の問題として、ボディ剛性が高いほど走りの質が高くなり、特に加速しながら曲がる、減速しながら曲がる性能が向上します。

これにより、ドライバーは自動車に対して信頼感と安心感を得ることができます。これが安全性にも繋がります。

車の安全性

メルセデス・ベンツCクラスW205
(出典)NetCarShow.com

アクティブセーフティ

ボディ剛性が高い自動車は4本のサスペンションが正確にストロークし、車体の挙動変化が少なくなります。これは、いざという時の高い緊急回避性能に繋がります。

ドライバーが運転中に危険を感じた瞬間、ブレーキとステアリング操作で事故を回避するように努めます。その時、車体の動きが安定していれば、事故を回避できる可能性が高まります。

高いボディ剛性が事故を未然に防ぐ性能に繋がると考えていいでしょう。

パッシブセーフティ

時代と共に自動車の衝突安全基準が強化され、安全性能が進化を遂げてきました。

車体の前後、側面で衝突エネルギーを上手く吸収し、高い剛性を持つキャビンが乗員を可能な限り守ってくれます。

もちろん、ボディ全体がガチガチに硬いようでは衝突時の加速Gが高くなり、乗員に影響を与えてしまいます。

YouTubeで検索すると、クラッシュテストの動画が数多くヒットします。このようなテスト結果はある程度、クルマを購入時の参考となるでしょう。

燃費より優先する性能

欧州車からスタートした「直噴ダウンサイジング・ターボエンジン」採用の主な目的は省燃費化。そして、燃費を良くするためには、車体の軽量化がかなり効果を発揮します。

メルセデス・ベンツCクラスのC200 AVANT GARDE(2,000cc)W205のスペックを見ると、車両重量は「1,540kg」。

C200(W205)のボディサイズは、

全長:4,690mm

全幅:1,810mm

W205は積極的にアルミが採用されていて、フロントフェンダー、ボンネット、トランクリッド、ドア、ルーフパネルはアルミ材。

メルセデス・ベンツCクラスW205

このボディサイズに近いFR車はトヨタのマークXで、

全長:4,770mm

全幅:1,795mm

マークXの250GはV6、2,500ccエンジンを搭載して車両重量は「1,510kg」。

C200とマークXはそれぞれ装備に違いがあるため、もちろん正確な比較はできません。ただ、仮にマークX 250Gに直4ターボエンジンを搭載するグレードが存在すれば、明らかに車重は軽くなります。

管理人の手元にC200と250Gのエンジン単体重量のデータが無いものの、V6から直4エンジンへの換装でざっと20~30kgの軽量化となるでしょうか。

1,510kg – 20kg = 1,490kg

1,510kg – 30kg = 1,480kg

C200 AVANT GARDEの車両重量は1,540kg。仮に、マークX 250Gに直4エンジンを搭載すると車重は1,480~1490kgほどでしょう。

とすると、メルセデスの方が少々重いようです。

これは、W205に限ったものではなく、かつてのW202、Cクラスの時代から、メルセデスは同クラスの日本車と比べて、やや車両重量が重い傾向があります。これは、シャーシやボディ骨格にコストが掛けられているためと言われています。

世界的に自動車の燃費性能が重要視される今日、メルセデス・ベンツはアルミ素材を活用して車体の軽量化を進めつつあります。

しかし、メルセデス・ベンツは自動車の基本であるシャーシとボディ剛性の確保を優先していると思われます。

メルセデス・ベンツは燃費性能を追求しながらも、走りの質と安全性能には妥協しないメーカーであることが見えてきます。

欧州車の傾向として、走りの質と安全性能>燃費。

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