多くの日本車はプレス製ドアヒンジを採用しています。
車のドアを開けてドアの取り付け部を見ると、蝶番(ちょうつがい、ちょうばん)が確認できます。
ドアを開けた状態でドアを上下方向に動かしてみると、ドアヒンジと取り付け部の微妙な捩じれを確認できます。
そんな事をやる人はあまりいないと思いますけど、自動車のドアヒンジは地味なパーツながら、自動車にとって大切なパーツなのではと思うのです。
鋳造製、鍛造製、鋼材から削り出しのドアヒンジ
メルセデス・ベンツのドアを開けると、目に入ってくるパーツが鋳造製(鍛造製?)のごついドアヒンジ。
この鋳鉄製の鋳造品 or 鍛造品は見るからに剛性が高そうなパーツ。このパーツは明らかにコスト高。
それでも、メルセデスや欧州車の多くは鋳物製や鍛造製、鋼材から削り出しのドアヒンジを採用しています。
なぜ、多くの欧州車が鋳造製や鍛造製、鋼材から削り出しのドアヒンジを採用しているのかネット検索しても、明確な答えを得ることができません。
多くは、このような内容です。
・鋳造製や鍛造製、鋼材から削り出しのドアヒンジを採用することで、ドア開閉時の感触と音が高級になる。
・プレス製ドアヒンジはドアの重みで伸びて甘くなってしまう。
これは↑本当だろうか?と首をかしげてしまいます。
ドアヒンジとドアの開閉音、感触の関係
ドアの開閉音と感触はドア内側の外周に取り付けられているゴム製のウェザーストリップの設計やドア本体の構造、鋼板の厚さ、ドアパネルの材質、内張りによっても変わってきます。
鋼板のドアとアルミ製ドアを比較すると、ドアの開閉音が明らかに違います。
極端な話、鋼板が薄い軽自動車のドアに鋳造製や鍛造製のドアヒンジを装着しても、ドアの開閉音や感触が極端に変わるとは思えないのです。
軽自動車から普通乗用車まで、鋳造製や鍛造製のドアヒンジを採用することで、ドアの開閉音と感触が激変するとは思えないのが管理人の考えです。
プレス製ドアヒンジは簡単に甘くならない
管理人が20代の頃、NISSAN S13シルビアを所有していました。
2ドア車のドアは4ドア車のそれよりも大きく、重量も増します。プレス製ドアヒンジにかかる負荷も増します。しかし、5年間で65,000km余り走行しても、ドアの開閉に不具合は一切ありませんでした。
他に、かつて我が家のHONDA、4ドアセダンは10年、100,000km以上、家族の移動手段として働いてくれました。その間、プレス製ドアヒンジが甘くなるような不具合は出ませんでした。
なお、ODOメーターが80,000km台から、走行中にドア周りからわずかな軋み音が出始めました。これは、ボディ剛性の低下が関係しているのでしょう。
いずれにしても、管理人の父が所有していた車を含めて、ドア下がりが原因でドアの開閉に不具合が出た記憶は一度もありません。
かつて、管理人が人づてに聞いた話では、昭和の時代はプレス製ドアヒンジの剛性不足が原因でドア下がりが発生することがあったそうです。ドアヒンジが甘くなり、ドアが閉まりにくくなることがあったようです。
しかし、平成の時代、そして令和に入り、「ドア下がり」なんて言葉を聞きませんし、若年層は知らない言葉でしょう。
4mm厚以上の分厚い鉄板をプレス成型してプレス製ドアヒンジが製造されている以上、プレス製ドアヒンジは簡単に甘くはならないのです。
自動車ドアの支持剛性
ドアの支持剛性を考えれば、鋳造製、鍛造製、鋼材から削り出しのドアヒンジはプレス製ドアヒンジより上ではないでしょうか。
自動車のドアは上下2つのドアヒンジとドアキャッチャーの3点で支持されています。自動車のボディは走行中、多方向から複雑なストレスを受けています。
自動車のドアは開閉可能な剛体として考えると、3点の支持剛性が高い方がボディ剛性の向上に繋がります。かつてのメルセデス・ベンツCクラス、W202のドアキャッチャー(ロッキングアイ)とドアはダボ形状の部品でした。
次に、大きな事故が発生した場合、鋳造製、鍛造製、鋼材から削り出しのドアヒンジであれば、ドアが根元から取れてしまう可能性が低くなるのではないでしょうか。
JNCAPの衝突安全性能
JNCAPの試験項目の中でオフセット前面衝突試験があります。
これは、試験車を時速64kmでアルミハニ力ムに運転席側の一部(オーバーラップ率40%)を前面衝突させる試験。
JNCAPの衝突安全性能は特定の条件下のテスト。確かに、それとまったく同一の条件で交通事故が発生すれば、乗員の生存率は高いことでしょう。
しかし、世の中の交通事故は千差万別。
一般公道で、ある自動車が時速70km、オーバーラップ率25%で他の自動車に衝突した場合、乗員の安全性が確保されるかどうかは、何とも言えません。
そして、各ドアがどのように変形するのかは誰も分かりません。
YouTubeで検索すると、交通事故現場でドアが根元から取れてしまっているシーンを数多く見ることができます。
欧州のエントリーモデルも形鋼ドアヒンジを採用
メルセデスのAクラスも鋳造製(鍛造製?)のドアヒンジを採用しています。フォルクスワーゲンの100万円台のエントリーモデルでさえ、鋼材から削り出しのドアヒンジを採用しています。
理由があるからこそ、欧州の各車は鋳造製、鍛造製、鋼材から削り出しのドアヒンジを採用しているのでしょう。
他方、日本車のDセグメント以上であっても、ほとんどはプレス製のドアヒンジを採用しています。
この違いは、いったい何でしょう?
いずれにしても、鋳造製、鍛造製、鋼材から削り出しのドアヒンジを採用することで、ボディ剛性の確保の面で明らかに有利です。
全てではないものの、欧州の100~200万円台の自動車でも、鋼材から削り出しのドアヒンジを採用しているケースがあります。
これはあくまで管理人の憶測の域を出ないものの、ドイツのアウトバーンのような速度無制限の高速道路において、ボディ剛性の確保などの理由からドアヒンジの作りに拘りがあるのかもしれません。
多くのカーオーナーは愛車のドアヒンジがプレス製なのか鋳造製、鍛造製、鋼材からの削り出しなのか特に気にしていないかもしれませんけど。
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コメント
単にサプライヤーの都合ではないでしょうか。プレス成形だと弱いということもないと思いますが。むしろバラツキの多い鋳造の方が弱い(安全率を多くとらないといけない)と思いますが。
足回りなんかプレスだらけですよね。
まず衝突安全試験でプレスヒンジと同じ成績なのにそれ以上の速度ではプレスヒンジより安全性が高くなるとか物理的にあり得ません
そんな魔法はこの宇宙にはありません
衝突試験より高い速度での衝突でプレスヒンジより安全ならばそれより低速での衝突試験で明確にプレスヒンジとの違いがでるはずです
剛性やドアの欠落に関してもヒンジ自体よりそれを取り付けてる車体及びドアの取り付け部分の強度の方がが重要です
そもそもメルセデスAのリアゲートヒンジはプレス品ですがプレスヒンジではボディ剛性を得られないと言うなら鋳造または鍛造品にしてるはずです
ハッチバック車にとってリアゲート周りの剛性は側面ドア周りの剛性以上に重要な部分ですからね
そして今のプレスヒンジは十二分に頑丈ですよ
厚さ4.5~5mmはある鋼板を変形しにくいように複雑に成型してますからね
衝突時のヒンジ自体の破損によるドアの欠落を言うならプレス品より亀裂の入りやすい鋳造品のが危険です
プレスか鋳造鍛造かは組み立て工程も関係しています
プレス品と鋳造鍛造品では取り付け工程が違うためにもし変える場合はロボットも変えなけれなりません
なので昔から鋳造ならば鋳造のままプレスならプレスのままで来ていると言うことです
世界的にはプレスヒンジが主流です
欧州車でもフランスはプレスが多いです
ドイツ車でも最近のVW車はプレス品が増えてきました
ラインを新しくした時にロボット等も変えたのでしょう
ドイツ御三家や最近のレクサスは鋳造品がメインですがこれは高級車としての見栄えの為です
勿論メーカーはそうは言いませんが実際はそんなところです