メルセデス・ベンツ7速AT,DCTの故障を予防し長持ちさせる3つの方法

メルセデス・ベンツATシフト

メルセデス・ベンツのAT/オートマチックトランスミッションは、1990年代前半まで「4速AT」でした。

【1990年代後半~】「5速AT」を採用するモデルが増加。

【2000年代に突入】ミドルクラスからアッパークラスにかけて、「7速AT」(7G-TRONIC)を採用。

【2015年】Cクラス(W205)が「9速AT」(9G-TRONIC)を採用。

【2016年】Eクラス(W213)が9速ATを採用。

【2017年】同年モデルのSクラス(W222)が9速ATを採用。

このように、メルセデス・ベンツのオートマチックトランスミッションは多段化が進んできました。多段ATのトレンドはメルセデスのみならず、世界の自動車メーカーのトレンド。

歴史的にメルセデス・ベンツのATは内製で完成度が高く、シフトアップとシフトダウンのタイミングや変速ショックの少なさ、タイト感、伝達効率の全てにおいてパーフェクトな仕上がり。

また、ロックアップ制御も緻密になり、メルセデスのATは確実に進化を続けています。

そこで、今回、メルセデスを含めた欧州車のAT/オートマやDCTの故障を予防し、長持ちさせる方法について呟いていきたいと思います。

欧州の道路交通網の特徴

アウトバーン

ドイツと言えば、網目状に張り巡らされているアウトバーン。欧州の道路網はスムーズな交通の流れを優先する思想で設計されています。

場所によってはラウンド・アバウトが設置され、円滑な交通の流れを優先して都市と道路網が整備されています。

このようなインフラ、そして、比較的湿度が低い環境の中で作られている欧州車は欧州の道路を起点にして鍛えられてきました。

しかし、欧州車は日本のように信号機が多く、発進と停止が頻繁で、平均速度が低い道路環境が得意とは言い難いものがあります。

つまり、欧州車の生い立ちと使用環境を考え、欧州車との付き合い方とメンテナンスに少々、気を使ってあげることで、欧州車ライフがより充実すると思います。

ATは減速中、シフトダウンを繰り返している

メルセデス・ベンツATシフトレバー

自動車のAT/オートマチックトランスミッションは、停止状態から1速でスタートし、エンジン回転数と車速に応じて、

2速

3速

4速

5速へ自動的にシフトアップしていきます。

(※)メルセデスのエコノミーとコンフォートモードを選択すると2速発進。

逆に、車速が下がり始めると、ATは自動でシフトダウンし、順次、

4速

3速

2速

1速へとシフトダウンしていきます。この時、ATハウジングの中で、クラッチ板を滑らせながらシフトダウンしています。

MT車の場合

今や、MT車オーナーは超少数派ながら、ドライバーがMT/マニュアルトランスミッション車を運転中、ギアを4速、または、5速に入れて走行しているとします。

前方の信号機が赤に変わると、そのまま惰性で走行し、車速が落ちてきたらクラッチペダルを踏んでギヤをニュートラルに入れる操作が多いのではないでしょうか。

MTであれば、減速時に5速からニュートラル、そして車速が落ちてくれば、2速や1速へギア飛ばし、飛ばしシフトが容易。

これが、ATとMTの大きな違いの1つ。

AT車は車速が下がってくると、AT内部では各パーツが忙しく動きながらクラッチ板を滑らせて、1段ずつシフトダウンしています。(一部のメルセデスとDCT搭載車はブリッピング機能搭載)

ATの段数が多い「7速AT」や「9速AT」は「5速AT」より忙しくシフトアップとシフトダウンを繰り返しています。多段ATの台頭により、AT本体とATFにとってもストレスフルな時代と言えます。

メルセデス・ベンツのAT修理、整備工場

ツールBOX-ソケットレンチ

メルセデスの「AT」や「オートマチックトランスミッション」の関連キーワードでGoogle検索すると、整備工場が運営するオフィシャルサイトやブログが数多くヒットします。

それらの内容として、メルセデスのATF交換からAT故障の修理、オーバーホール関連の情報が充実しています。

これらのネット情報を閲覧すると、メルセデスのATは鬼門?といった印象を受けてしまう人がいるかもしれません。

まず、メルセデス・ベンツのATが故障した場合、正規ディーラーは状態によってアッシー交換と判断します。よって、高額な修理費用が発生します。

一方、メルセデスATの修理経験が豊富な整備工場は、より小回りの利く修理、部品交換で対応できます。

言わば、メルセデスのATに造詣が深い町工場は、AT故障修理の隙間を埋めている専門業者。メルセデス乗りの駆け込み寺的な存在です。

ATとDCTを長持ちさせる”3つ”の操作方法

メルセデス・ベンツATシフトレバー

当ブログの管理人は長年、日本車のMT車、AT車、CVT車のステアリングを握ってきました。

ちなみに、管理人が乗り継いできた車両の中で、ATが故障した経験は1度もありません。(CクラスW202のATを制御する電子基板が故障したことは有り。)

逆に、なぜATが故障するのか不思議。

もちろん、この世に故障しない機械は存在しません。機械に無理な負荷を与えるような操作を繰り返していれば、いつかトラブルが発生しても不思議ではありません。

では、管理人が長年、実行してきた、メルセデス・ベンツを含むATのトラブルを予防し、長持ちさせる簡単な3つの操作方法をご紹介します。

No1 Dレンジに入れたら、駐車するまでNレンジに入れない

信号待ちで、まれに前車が「D(ドライブ)」から「N(ニュートラル)」レンジに切り替えている様子を目にする時があります。これは、ブレーキランプの点灯状態で分かります。

信号が赤から青に変わり、「N」から「D」レンジ切り替えた時、AT内部のクラッチ板同士が接触して繋がります。

このような操作は無意味ですし、毎日、このような操作を繰り返していれば、長期的にクラッチ板の摩耗を促進させてしまいます。

No2 タイヤが完全停止してから、シフトレバーを操作する

車庫入れや方向転換などでドライバーの癖なのか、車両がわずかに前進している状態で「R」レンジに入れたり、逆に、車両がわずかに後退している状態で「D」レンジに入れてしまう操作を目にする時があります。

その時のシフトショックは大きく、同乗者はドキッとします。そのような操作を繰り返すと、長い目で見れば、ATやDCTの故障を招くリスクが高くなります。

タイヤが完全停止してから、シフトレバーを操作するように癖を付けることで、トランスミッションの無用なトラブルを回避できます。

No3 NからDレンジ、または、Rレンジに入れたら、少し待つ

駐車や方向転換の時、シフトレバーが「D」と「R」レンジを往復します。この時、次のように操作します。

【前進時】

「P」レンジや他のレンジから「D」レンジに入れて、ブレーキペダルから足を離す。

車が「数メートル」前進してから、アクセルペダルを踏み込む。

タイヤの直径が約60cmとします。

タイヤが1回転すると、車体は60cm×3.14=188.4cm進みます。タイヤが2回転すると、60cm×3.14×2回転=376.8cm進みます。

よって、タイヤが1回転以上、2回転未満転がれば、車体は2~3m進みます。

【バック時】

「P」レンジや他のレンジから「R」レンジに入れて、ブレーキペダルから足を離す。

車が「数メートル」後退してから、アクセルペダルを踏み込む。

AT車の場合、シフトレバーを操作しても、クラッチ板がスイッチのように瞬時に繋がる訳ではありません。クラッチ板が完全に繋がるまで、少し「間」があります。

そこで、シフトレバーの操作後、クラッチ板が完全に繋がるまで少し待つのです。

ちょっとしたテクニックながら、以上の3点に気を配るだけで、ミッショントラブルの予防に繋がります。

以上の操作は、DCTやCVT車にも当てはまります。

以下のYouTube動画でも、管理人と同じ考え方です。

■追記

追記として、今日のメルセデスのATは「コンフォートモード」「ECOモード」「スポーツモード」「スポーツプラスモード」から選択できます。

街乗りでは「コンフォートモード」または「ECOモード」を選択し、高速道路では「コンフォートモード」または「スポーツモード」を選択すると、よりトランスミッションの性能を引き出すことができます。

パドルシフトを操作するとATがレスポンスよく変速するため、これが癖になるかもしれません。しかし、過剰なシフトアップとダウン操作は明らかにATの負担が増えます。

パドルシフトはワインディングロードなどで限定的に使用した方がいいかもしれません。

ストール発進はハイリスク

AMGホイールスピン

どのようなATでも、ゼロヨン加速テストで使われるストール発進(※)を繰り返すと、AT本体への負担が大きく、ATFの温度も上昇するため、AT故障を引き起こす原因になるのは言うまでもありません。

(※)ストール発進

AT車の場合、左足でブレーキペダルを踏みながら、アクセルペダルを踏み込み、左足をブレーキから離す急発進操作。

メルセデス・ベンツのATF交換

メルセデス・ベンツのATF/オートマチック・トランスミッション・フルード交換については、オーナーの考え方次第。2~3年毎に車を乗り換えるのであれば、ATF交換は不要かもしれません。

しかし、管理人はメルセデス・ベンツのATFは定期的に交換した方がいいと考えます。

メルセデス・ベンツのAT修理工場

Google検索すると、メルセデス・ベンツのAT修理を専門とする整備工場が少なくありません。

整備工場が運営しているオフィシャルサイトやブログ、YouTubeを閲覧すると、100%の工場がATF交換を推奨しています。

「それは営業では?」

と思う方もいることでしょう。

もちろん、整備工場はボランティア組織ではありません。

メルセデス・ベンツのAT修理、オーバーホールの経験が豊富な整備工場は、メルセデスATの酸いも甘いも噛み分けています。

この世に劣化しない油脂は存在しません。メルセデスのATに造詣が深い業者は経験上、定期的なATF交換を推奨しているのではないでしょうか。

例えば、多くの患者を診察してきた歯科医師は、歯のケアが不適切な患者の口内を覗き込みながら、「歯のメンテナンスを怠っていれば、そりゃ歯肉炎になるよ」と内心つぶやいていることでしょう。

誰もが日々の経験を積むことにより、頭に統計的なデーターが蓄積されていきます。

もしかして、今日も日本のどこかのメルセデスのAT修理工場で、

「あー」

「これじゃ…」

「やっぱり…」

といったメカニックの声が飛び交っているかもしれません。

ATF交換については、以下の関連記事▼にて。

[関連記事]

整備工場で1年点検時、メルセデス・ベンツC200(W204)のオートマオイル/ATF交換を実施。今回のATF交換時期は42,000km。ATF交換費用を含めてATF交換後のインプレッションはこちら。
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