タイヤのハイドロプレーニング現象が発生した時の対処方法と対策

雨の高速道路

自動車の運転歴が長いドライバーならば、ハイドロプレーニング現象の意味を理屈ではなく、身をもって経験しているのではないでしょうか?

高速道路の直線区間でハイドロプレーニング現象に出くわした瞬間、ドキッとするのは当然。もし、カーブの途中でハイドロが発生したら、運を天に任せるしかありません。

自動車のステアリングホイールを握るドライバーは予備知識として、ハイドロプレーニング現象について知っていた方が身のためと言えます。

と言うのも、ハイドロプレーニング現象は主に高速道路で発生します。しかも、予期せず意表をついて発生します。

そこで、運転免許証を取得後、長いカーライフの中で1度や2度は経験するかもしれないハイドロプレーニング現象について情報をまとめてみたいと思います。

以下、管理人の運転経験の中で「ドキッ」とした経験を踏まえたノンフィクションです。

ハイドロプレーニング現象とは?

ハイドロプレーニング現象について、ググれば情報がいろいろと表示されます。このハイドロプレーニングという日本語は英語をカタカナ英語に置き換えた言葉。

ハイドロプレーニングとは、英語でhydroplaning。

同意で、Aquaplaning:アクアプレーニングとも言われます。

Hydroplaning/ハイドロプレーニング

ここで、hydroplaningという少々長い英単語を分割してみます。hydroplaningという英単語は、「hydro」 + 「planing」に分割できます。

「hydro」とはwater、つまり「水」。

hydro = 水。

そして、

planingには、船体の滑走という意味があります。

英語のplaneは飛行機を意味します。語尾にingが付くことで、滑走する、浮くように疾走するという意味になります。

ここで、3つのキーワードが出てきました。

・水

・船体

・滑走

この3つの言葉を一目で理解できるものは、この動画。

Hydroplane Boat Race/ハイドロプレーン・ボートレース

一例として、アメリカ合衆国のワシントン州シアトル、ワシントン湖はハイドロプレーン・ボートレースが開催される場所として知られています。

このレースに出場するハイドロプレーンボートの中には、ヘリコプター用のタービンエンジン(ターボシャフトエンジン)を搭載し、出力は3,000馬力とも言われます。

エンジンパワーをスクリューに伝え、船体が水面を滑るように滑走して競うのがハイドロプレーン・ボートレース。

ハイドロプレーン・ボートは停止中、かろうじて水面に浮いている状態。

エンジン音が高まり、速度上昇と共に船体が水面に接触するか浮くか微妙な状態で最高速度は300km/h超に達するボートレース。

日本では競艇を除き、馴染みが無いボートレースながら、アメリカでは人気を博しているハイドロプレーン・ボートレース。

YouTube動画でハイドロプレーニング(滑走)の意味が理解できます。

ハイドロプレーニング現象が発生する瞬間

↑中谷さん若い!

運転中、ステアリングホイールを通して、適度な重さと情報がドライバーに伝わっています。

ドライバーはほとんど無意識ながら、ステアリングを通して「タイヤが小石を踏んだ」「マンホールの蓋を踏んだ」「水溜りを通過した」等々の情報を感じ取っています。

ステアリングにいつもと違う微振動が伝わってきた場合、フロントタイヤをチェックすると、タイヤの溝に小石が挟まっている事もあります。

ステアリングホイールには、テニスラケットや野球のバットのように微妙なインフォメーションが伝わってきます。

ハイドロプレーニング現象が発生した瞬間、ステアリングホイールの重さが変化します。タイヤと路面の間に水が入り込むことで、ステアリングが軽くなります。

FF車の場合、走行中にエンジン回転だけが上昇することもあります。

ドライバーがステアリングの感触が軽くなったと思った瞬間、フロントタイヤが水の膜に浮いています。ステアリングからタイヤの接地感が薄くなってきたら、すでにハイドロが始まっている可能性があります。

これが、ハイドロプレーニング現象。

ハイドロプレーニング現象が発生した瞬間の対処方法

雨の高速道路

小雨交じりの高速道路では、ハイドロプレーニング現象の心配は少ないと思います。日本の高速道路は概ね水はけが良く、パラパラの雨で路面が濡れている程度であれば、ハイドロの心配はほとんどありません。

ところが、雨量が多く路面に水が溜まっていると、80km/hを超えて100km/h前後からハイドロプレーニング現象が発生しやすくなります。

もちろん、タイヤが摩耗して残り溝が少ないほど、低い速度域でハイドロプレーニング現象が発生しやすくなります。

また、低偏平&ワイドタイヤの増加により、タイヤの路面に対するコンタクトパッチが左右方向に広がっている傾向があります。このようなタイヤはハイドロが発生しやすくなります。

そこで、ドライバーが高速道路を走行中、ステアリングを通してハイドロプレーニング現象を感じた瞬間どうすればいいのでしょうか?

対処方法1

これは万国共通でアクセルペダルを緩めるしかありません。

対処方法2

そして、待つしかありません。

禁忌操作

ブレーキペダルを踏んではいけませんし、ステアリング操作も厳禁。シフトダウンもNG。

もし、急ブレーキを踏んだら、タイヤが路面に接触した瞬間、車体が不安定になる危険性があります。同時に、ESPなどの横滑り防止装置がどのように反応するか未知数。

もし、ステアリング操作したら、タイヤが路面に接触した瞬間、車体が左右方向へ進路を変えてしまいます。

タイヤが水の膜の上に浮いてしまったら、初心者マークのドライバーからプロレーサーまでどうすることもできません。

管理人のハイドロプレーニング現象経験

ハイドロ経験1

管理人が超エコタイヤを履くプリウスで雨の高速道路を走行中、何故かエンジンの回転が上がり始めました。車速は100km/h前後。

もしかしてと思い、アクセルペダルから足を離した瞬間、タイヤが路面を掴む感触が軽いショックと共に伝わってきたのです。

そうです。

エンジン回転が上がった瞬間、フロントタイヤが空転し、ハイドロプレーニング現象が発生していたのです。

ちなみに、プリウスはFF。

ハイドロ経験2

FR車で雨の高速道路を走行中、加速しようとアクセルペダルペダルを踏みこむと、何故か不自然にエンジン回転が上昇を始めたのです。

その車はATのターボ車。

AT車でアクセルペダルを一定以上、踏み込むと、当然ATがキックダウンしてギヤが落ちます。そして、エンジンの回転数が上昇します。ただ、いつもより不自然にエンジン回転が上昇したのです。

「おやっ?」と感じて、その瞬間、アクセルペダルを緩めると、エンジンも車体も平穏無事な状態に戻ったのです。リヤタイヤと路面の間に水の膜が入り込んでホイールスピンしたのでしょう。

ハイドロ経験3

日本のMR車(RRに近い日本車)で雨の高速道路を走行中、前方の路面に横方向の水の流れが視界に入ってきました。その時の雨量は多め。しかも、道路がわずかに左へカーブしていました。

その瞬間、フロントタイヤが微妙に右方向へ持っていかれました。その時、横風の影響も受けたかもしれません。

フロントタイヤが水の膜に乗り、浮いてしまったのです。車速は80~90km/hほどであったと記憶しています。

管理人がアクセルペダルから右足を離すと、車体は走行車線に戻ったのです。その時、走行車線(左側車線)を走っていたため、事なきを得ました。ステアリング操作はそのままで。

もし、経験不足なドライバーであれば、その瞬間、慌ててステアリングを左に切ってしまったかもしれません。車体が左に曲がらない場合、ステアリングを切り増しするのは人の本能。

フロントタイヤが水の上で浮いた瞬間、更にステアリングを左に切り増ししたら、

しばらく、車は曲がらない

フロントタイヤがグリップを取り戻した瞬間、車体は左方向へ

車が蛇行

最悪、高速道路上でスピン

管理人の数々のハイドロプレーニングの経験の中で、以上のヒヤッと体験は今も鮮明に記憶に残っています。

 ハイドロプレーニング現象の予防策

雨天時の高速道路におけるハイドロプレーニング予防対策として、いくつか考えられます。

・タイヤの空気圧を指定空気圧より20~30kPa以上、高めに設定(トレッドの面圧を上げる)

・交通の流れを見ながら、車速を抑えて走行

・雨量が多い時、クルーズコントロールの使用は慎重に

・排水性能の高いタイヤを選ぶ

ウエット性能が高いタイヤ

日本のドライバーはタイヤのパターンノイズを嫌う傾向があるようです。そのような背景から、パターンノイズが小さく静粛性が高いタイヤがドライバーから一定の支持を受けています。

しかし、世の中にバラ色のタイヤは存在しません。

タイヤは複数の二律背反の要素から成り立っています。

静粛性が高いタイヤの特徴として、トレッドの横溝が細くなる傾向があります。よって、雨天時の排水性能に少々目をつぶっているタイヤ設計とも言えます。これがデメリットと言えます。

その点、雨天時の排水性能を考慮して設計されているタイヤはトレッドの縦溝はもちろんのこと、横溝も太いのが特徴。

雨天時のハイドロプレーニング現象対策として、ウエット性能を考慮したタイヤ選びが大切になります。

クルーズコントロール使用のリスク

高速道路を走行時、クルーズコントロールは便利な機能。しかし、雨量が多い日にクルコンをセットしての走行は慎重に考えた方がいいかもしれません。

と言うのも、クルコンのセットを解除するには、クルコンのレバー(スイッチ)をOFF方向に動かすか、ブレーキペダルを踏むかどちらかのアクションが必要。

メルセデスのクルコンレバーは伝統的にウインカーレバーの上に位置しています。新型モデルはスイッチの場所が変更されているようですが。

ここで、ハイドロが発生した瞬間、左手が一瞬で動いてくれるかどうかが問題。さすがに、ブレーキを踏むことはできません。

メルセデスオーナーの中で、クルコンレバーが「左手の恋人」であれば、雨量が多い高速でもクルコンを使用できるでしょう。左手が瞬時に反応するので。

しかし、予期できない事が起きるのが一般公道。

クルコンをセットして走行中、摩耗しているタイヤが深い水溜りに差し掛かると、車速が落ちやすくなるため、クルコンのコンピュータが瞬時に反応して燃料を増量します。

車速を維持するために、車が水溜りの中で加速しようとするのです。

この瞬間とハイドロプレーニング現象が重なった瞬間、やはり危険。車はハイドロに気付いてくれません。

ちなみに、自動車がハイドロに気付いてくれるようなシステムの開発が可能であれば、自動車の安全性は更に高まります。頭のいいエンジニアさんたちは是非、ハイドロ対策の安全システムを考えください。

雨の日のクルーズコントロールは慎重に

ハイドロが発生する条件は複数。大雨の高速道路で80km/h前後でゆっくり走行するのであれば、クルコンを使用していいかもしれません。

このあたりは、その時の路面状況とタイヤ、ドライバーの判断次第。

あと、ワイドな低偏平タイヤほど雨に弱くなる一面が顔を出します。タイヤの溝が半分以上でも水深と車速によっては、ハイドロプレーニング現象が発生する場合があります。

特に、フロントの重量が軽く、ワイド&低偏平タイヤを履くスーパーなRRやMRスポーツカーはハイドロプレーニング現象が発生しやすくなります。

雨の高速道路では、ハイドロプレーニング現象を頭の片隅に入れておいて、ハイドロに遭遇しないように安全速度で走行するしかありません。

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