低燃費タイヤブームは今は昔-AAAエコタイヤの効果と燃費,デメリット

自動車用タイヤとホイールセット

久しぶりに日本の各タイヤメーカーのオフィシャルサイトを閲覧すると、タイヤのラインアップに大きな変化が見られます。

かつて、エコカーの一大ムーブメントが巻き起こり、日本の各タイヤメーカーは燃費性能を引き上げた低燃費タイヤを続々と市場に送り出していました。

当時、タイヤカタログを眺めると、転がり抵抗係数の等級が「AAA」の低燃費タイヤが華々しくカタログを飾っていました。

「AAA」(トリプルA)の低燃費タイヤとは、一般財団法人、日本自動車タイヤ協会が定めるラベリング制度で最も転がり抵抗が小さくて燃費がいいタイヤを意味します。

しかし、今となっては日本の各タイヤメーカーのオフィシャルサイトで「AAA」タイヤが少なくなっているようです。何故なのか考えてみたい。

低燃費タイヤ、エコタイヤとは?

トヨタのプリウスに代表されるエコカーがブームの頃、自動車メーカーのカタログ燃費の数値を引き上げるために、各パーツにあらゆる技術が投入されていました。

その中の1つがタイヤ。

タイヤがグリップするメカニズムは、大雑把にゴムと路面の摩擦力によるもの。ゴムの摩擦力を上げることで、タイヤのグリップ力が上がっていきます。しかし、同時にタイヤの転がり抵抗が増していくため、燃費性能は低下していきます。

言わば、低燃費タイヤはSタイヤやハイグリップタイヤとは逆の発想で設計されているタイヤ。

自動車の燃費を良くするためには、転がり抵抗を小さくしたタイヤを履けばいいのです。コロコロと良く転がります。このようなタイヤが低燃費タイヤ、エコタイヤと呼ばれるようになったのです。

ラベリング制度

一般財団法人、日本自動車タイヤ協会がラベリング制度を定め、一定の基準を上回るタイヤは低燃費タイヤ、またはエコタイヤと呼ばれます。

転がり抵抗係数の等級が「A」以上で、ウェットグリップ性能の等級が「aからd」に収まるタイヤを「低燃費タイヤ」と定義しています。

転がり抵抗係数(RRC) 等級
RRC≦6.5 AAA 低燃費
6.6 ≦ RRC ≦ 7.7 AA
7.8 ≦ RRC ≦ 9.0 A
9.1 ≦ RRC ≦ 10.5 B グリップ重視
10.6 ≦ RRC ≦ 12.0 C

ウエットグリップ性能(G) 等級
155 ≦ G a
140 ≦ RRC ≦ 154 b
125 ≦ RRC ≦ 139 c
110 ≦ RRC ≦ 124 d

出典:一般財団法人、日本自動車タイヤ協会

AAAタイヤの問題

雨の高速道路 by C200-W204

タイヤの転がり抵抗とウエットグリップは二律背反の関係にあります。要は、この2つはシーソーのような関係。

タイヤの転がり抵抗を小さくするほど「AAA」に近づいていき、燃費が改善されます。しかし、ウエットグリップは低下していくトレードオフの関係にあります。

タイヤも「あちらを立てればこちらが立たず」。

AAAのような低燃費タイヤは転がり抵抗をかなり小さくしたタイヤ。これで燃費を稼ごうという燃費命タイヤなのです。

左矢印(オレンジ) 転がり抵抗が小さい

タイヤ&ホイール AAA AA A B C
  傘  a  b  c  d

左矢印(オレンジ) ウエットグリップが高い

日本の各タイヤメーカーのオフィシャルサイトを見ると、「AAA-a」なんてタイヤが見つかります。測定上、そのようなデータが出ているのでしょう。

しかし、そのようなタイヤは別のどこかの性能にしわ寄せがいっている可能性があります。バラ色のタイヤなんて、この世に存在しないので。

「AAA」タイヤは燃費を最優先したタイヤですから、ドライグリップ、ウエットグリップ、乗り心地、耐摩耗性、操舵感のどれか、または複数が犠牲になってしまうタイヤなのです。

ミシュランタイヤに「AAA」は見つからない

例えば、ミシュラン・プライマシー3/MICHELIN PRIMACY3は低燃費タイヤでラベリング表示は「A-b」。

ミシュラン・プライマシー3のラベリング表示

タイヤ&ホイール AAA AA A B C
  傘  a     c   d 

ミシュラン・プライマシー3は転がり抵抗はそこそこに抑えて、ウエットグリップを確保したタイヤに入ります。

今まで、管理人がミシュランのタイヤカタログを眺めてきて言えることは、ラインアップの中で「AAA」タイヤを見たことがありません。

そもそも、ミシュランタイヤは大昔(1992年)からタイヤにシリカ(SiO2 = 砂の主成分)を配合し、転がり抵抗が小さく燃費がいいグリーンタイヤを販売してきました。

低燃費タイヤの大先輩とも言えるミシュランが「AAA」タイヤを作らないのは理由があるからでしょう。ミシュランが「AAA」タイヤを作れないのではなく、あえて作らないのはトータルバランスに問題が発生するからだと思います。

低燃費タイヤと燃費の関係

じゃ、「低燃費タイヤに交換すると、どのくらい燃費が良くなるの?」という疑問が湧きます。あえて低燃費タイヤを選ぶ以上、燃費がどのように変化するか気になるはず。

ブリヂストンタイヤのオフィシャルサイトによりますと、次のとおりです。

タイヤ交換後の

燃費の変化

タイヤ交換

(タイヤの転がり抵抗性能)

AAA AA A
タイヤ交換

(タイヤの転がり

抵抗性能)

AAA -1% -2%
AA 1%改善 -1%
A 2%改善 1%改善

出典:ブリヂストン・オフィシャルサイト、低燃費タイヤ

ブリヂストンのタイヤの基礎知識ページです。低燃費タイヤの条件やグレーディングシステム(等級制度)、ラベリング制度の表示例と見方についてご紹介します。

表の見方

仮に、Aさんの愛車に装着しているタイヤのラベリング表示が「A-b」とします。

上図の[A]が該当します。

[A]タイヤから[AA]タイヤに交換すると、燃費が「約1%改善」されます。

低燃費タイヤの燃費改善(AからAA)

[A]タイヤから[AAA]タイヤに交換すると、燃費が「約2%改善」されます。

低燃費タイヤの燃費改善(AからAAA)

低燃費タイヤの燃費改善率は一定の速度で走行している時に効果を発揮します。信号機が少ないバイパスや高速道路を一定の速度で走行している時に燃費の改善効果が得られます。

通勤や仕事で日々、バイパスや高速道路を走行するのであれば、低燃費タイヤの性能を発揮しやすくなります。

一方、発進と停止を繰り返す街乗りでは、常に自動車が加速と減速を繰り返しているため、低燃費タイヤの燃費改善率は何とも曖昧になってしまい、上図の改善率以下に低下します。

低燃費タイヤの経済性

一例として、Aさんの1年間の車両燃料費が100,000円としましょう。

現在、Aさんの愛車に装着しているタイヤのラベリングは「A-b」とします。このタイヤから「AAA-c」タイヤへ履き替えるとしましょう。

上記の表では、[A]タイヤから[AAA]タイヤに交換すると、燃費が約2%改善されます。

100,000円/年×2% = 2,000円/年

これはかなり大雑把な計算ながら、1年あたり燃料費が2,000円節約できると仮定しましょう。そして、4年後にタイヤ交換するとしますと、

2,000円×4年 = 8,000円

4年間で大雑把に8,000円の燃料費が節約できます。

今、Aさんの愛車に装着している「A-b」タイヤの価格が4本で40,000円とすると、交換後の[AAA]タイヤの価格が4本で48,000円未満であれば、低燃費タイヤによる経済的なメリットがあります。

交換後の[AAA]タイヤの価格が48,000円超の場合、燃費改善効果はあるものの、タイヤの価格が高くなるため経済的なメリットはありません。

以上はかなり大雑把な計算です。

実際、[A]タイヤから[AAA]タイヤに交換して、一律2%の燃費改善効果が得られるわけではありません。また、[AAA]タイヤの価格はメーカーとブランド、サイズによって変動します。

燃費はAAAタイヤで激変しない

このように、[AAA]タイヤに交換しても、燃費が大幅に改善されるわけではないことが見えてきます。タイヤ単独で自動車の燃費を良くするのは非常に難しいのです。

もちろん、愛車にブリヂストンタイヤのポテンザ/POTENZAあたりを履いているのであれば、ハイグリップタイヤから[AAA]タイヤに交換することで、上の計算以上の燃費改善効果が得られるでしょう。

しかし注意点として、ポテンザから[AAA]タイヤに交換すると、雨の日のウエットグリップの低さに驚くはずです。今まで、ポテンザを履いてドライブしてきたドライバーの体にポテンザのグリップ感覚が染みついているから無理もありません。

ハイグリップタイヤからAAAエコタイヤに履き替えたら、くれぐれも慎重な運転をお勧めします。

燃費を取るか、安全を取るか

雨の日のドアミラー

低燃費タイヤの最高グレードである「AAA」タイヤを履くことで、若干の燃費改善効果はあります。しかし、低燃費タイヤで燃費が激変することは無いことが分かります。

そして、燃費と引き換えに「AAA」タイヤは特にウエットグリップが低下する傾向があるため、これが大きな問題なのです。

ヒヤッと経験

かつて管理人は某ブランドのエコタイヤを履いていて、危険な目に遭った事が何回かあります。

走行中、信号機が微妙なタイミングで黄色に変わる時があります。その時、ドライバーはルームミラーで後方を確認し、急ブレーキを踏むか、行くかの判断が微妙な瞬間があります。

夜の雨の日、そのようなシーンで急ブレーキを踏んだら、停止線をオーバーして横断歩道の上でようやく停止したことがあります。停止時、車のフロントは若干、交差点に進入していました。その時、ブレーキペダルを踏んだ瞬間からABSは作動状態でした。

同じく雨の日、普通にブレーキを踏むと、ABSが作動して制動距離が伸びてしまい、前の車まであとわずかなところで停止したこともあります。

その頃、履いていたエコタイヤは外気温が低いと、ドライバーを裏切るようにグリップ力が低下する癖があったのです。

このように、超エコタイヤのウエットグリップ性能の低さは看過できないほどでした。管理人の経験上、燃費性能をかなり引き上げた超エコタイヤはウエットグリップに問題があったのです。

このようなヒヤッと経験をすると、超エコタイヤなんて2度と買わなくなります。

管理人と同じような「ヒヤッとした」経験があるドライバーは1人や2人ではないと思います。あるいは最悪、事故ってしまったドライバーがいるかもしれません。

超エコタイヤの中には失うものが大きく、わずか数%の燃費改善と引き換えに、タイヤのグリップ不足が原因で事故ってしまったら本末転倒なのです。

必ずしもトレンドが是とは言えない

日本は雨が多い国。

日本の1年間の平均降水量はアメリカの約2倍、タイ王国と肩を並べるほど雨が多い国なのです。

この事実に直面して、日本の各タイヤメーカーは行き過ぎた「AAA」タイヤから「AA」や「A」タイヤの開発に経営の舵を取り直してきたのではと推測します。

だからこそ、日本の各タイヤメーカーのオフィシャルサイトを閲覧すると、今となってはエコタイヤのラインアップは「AA」と「A」タイヤが大多数なのでしょう。

自動車や自動車部品に限らず、どの分野でもブームやトレンドがあります。いつの時代も時代の「空気感」というものがあります。

業界がトレンドに片足を突っ込むくらいであればいいものの、両足を突っ込んでしまうと業界全体が間違った方向に進んでしまうことがあることがタイヤからも窺えます。

世の中の事象は総じてメトロノームのように行き過ぎて、逆方向に戻ることが多々あるのです。

改めてタイヤは安全と人命を支えている重要なパーツ。燃費を取るか、安全を取るかはドライバーの考え方次第。

「自分は安全運転に徹しているから、超低燃費タイヤを選ぶ。」というドライバーもいることでしょう。

走行中に突発的な危険に遭遇した時、ドライバーは急ブレーキと急ハンドルで危険回避に努めます。その瞬間、確実に言えることは、危険を回避できるか否かは最終的にタイヤのグリップ力によって大きく左右されます。

雨の日はなおさらです。

ABSやスタビリティ・コントロール・システムで神回避ができるわけではない事を忘れないようにしたい。

あなたは、2%UPの燃費向上を取りますか?

それとも、安全性を取りますか?

どちらを取るかは、あなた次第です。

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