カーバッテリーの交換時期はいつ?カーバッテリーの寿命と点検方法

12Vカーバッテリー(開放型)

自動車の消耗部品の中で、12Vカーバッテリーは代表的とも言えるパーツ。

冬は外気温の低下により、バッテリーが弱くなりがち。カーオーナーであれば、バッテリー上がりの経験が1度や2度はあるかもしれません。

夏もバッテリートラブルが多く、車内で消費電力が大きいエアコンの作動により、電装系の負担が増します。

カーバッテリーが劣化してくると、コンビニやスーパーマーケットで買い物をして車に戻ってきたらエンジンがかからない・・・なんてトラブルは珍しくありません。

今、この瞬間、日本のどこかでバッテリー上がりが発生しているかもしれません。

多くの自動車はアイドリングストップ機能を標準で搭載する時代。電動パワーステアリング、カーナビ、TV、ミニバンの電動スライドドア等々、エンターテイメントや快適装備が増加の一途を辿ってきました。

このような背景から、カーバッテリーは益々過酷な環境下に置かれています。

高性能カーバッテリーは比較的、耐久性が高い傾向があります。他方、アジア圏から日本に輸入されている安価なカーバッテリーに耐久性は期待できません。当然です。

しかし、高性能な湿式バッテリーであっても、意外と早期に寿命を迎えることがあります。

何とも、カーバッテリーの寿命は捉えどころが無いのです。バッテリーの寿命と交換時期について、一概に「こう」とは言えない曖昧な世界。

いったい、劣化していくカーバッテリーの内部で何が起きているのでしょうか。なぜカーバッテリーは劣化していくのでしょう?

では、カーバッテリーの蓋を開けて中を覗いて見てみましょう。

Here we go!

Open the car battery

12Vカーバッテリー(開放型)

12V鉛バッテリーの電極板

鉛バッテリーの電極板グリッド

鉛バッテリーのグリッド-Grid of lead acid battery

グリッド

鉛バッテリーの構造はシンプル。

鉛バッテリーは6つのセル(部屋)で仕切られ、湿式バッテリー(※)の場合、各セルの中で複数枚の電極板が上部からぶら下がっています。

電極板の基本骨格となるのがグリッド。上図の格子状のパーツ。グリッドは電極板の骨組みに相当します。グリッドの形状や厚みは、バッテリーメーカーのブランドにより異なります。

(※)湿式バッテリー

電極板が電解液(希硫酸)に浸っている構造の鉛バッテリー。開放型と密閉型がある。

陰極板(負極)Pb

鉛バッテリーの陰極板(負極)

陰極板の格子状のグリッドに活物質である鉛ペースト(Pb)が塗り込まれています。

建設業の左官屋さんが施行する土壁のように、竹小舞を編んで土を塗り込んでいくようなイメージです。実際のバッテリー工場では全自動。

陽極板(正極)PbO2

鉛バッテリーの陽極版(正極)

陰極板の格子状のグリッドに活物質である二酸化鉛ペースト(PbO2)が塗り込まれています。

12Vカーバッテリーの内部構造

12V鉛バッテリーの電極板

上図は12V鉛バッテリーの大まかなイメージ。

12V鉛バッテリーは6つのセルで仕切られています。陰極板と陽極板は交互に並べられ、セパレーターで仕切られています。陰極板と陽極板の枚数はバッテリーメーカーやブランドによって異なります。

1セルあたりの電圧は2.1V。12Vバッテリーの総電圧は充電後、12.60Vを出力します。

鉛バッテリーの内部は希硫酸(H2SO4)で満たされています。一般的に電解液をバッテリー液と呼びます。

カーバッテリーの劣化原因は2つ

カーバッテリーを含む鉛バッテリーが寿命を迎える劣化原因は2つあります。

[1]サルフェーション(硫酸鉛)

鉛バッテリーが放電時、電極板の表面に白いサルフェーション(PbSO4)が発生します。そして、サルフェーションは充電時に電解液へ溶け込んでいきます。鉛バッテリーの内部では、充電と放電時にこのサイクルを繰り返しています。

ところが困った問題があります。

放電時に電極板に発生したサルフェーションはバッテリー充電することで、電解液に溶け込んでいくはずです。しかし、充電と放電の繰り返しや充電不足、放電過多の状態が続くと、サルフェーションが電解液に戻りにくくなる現象が起きます。

一例として、走行頻度が少ない自動車のバッテリーはサルフェーションの影響を受けやすくなります。

カーバッテリーは自己放電により、わずかに放電していきます。更に、車両の暗電流(待機電流)により、バッテリーは徐々に放電していきます。

そこで、充電すればバッテリーが復活すると思いきや、サルフェーションの影響を受けているバッテリーは容量が減少しています。サルフェーションという物質は電気を通さないため、放電性能が低下し、充電してもバッテリーが蓄電しにくくなっていきます。

結果的に、走行頻度が少ない自動車のバッテリーは充電器で充電しても、バッテリーが上がりやすくなります。

まとめますと、

・充電不足、放電過多により、鉛バッテリーはサルフェーションの影響を受けやすい

・サルフェーションは電気を通さない物質

・サルフェーションにより、充電しにくく、放電性能が低下する

以上が鉛バッテリーが劣化する1つの原因です。

[2]電極板の物理的な劣化

カーバッテリーの電極板は使用環境により、徐々に物理的な劣化が進んでいきます。充電、放電の繰り返しやエンジンルームの熱、振動等により、電極板そのものが劣化していきます。

長期的にはグリッド表面の活物質がポロポロと剥がれ落ち、グリッドそのものが物理的に劣化していきます。グリッドと活物質の設計、製造技術の違いが電極板の性能と耐久性を左右します。

やはり、高性能カーバッテリーほど、電極板の性能と耐久性が高い傾向があります。逆に、アジア圏から輸入されている激安カーバッテリーはそれなりの品質ということもあり、信頼性と耐久性の面でも価格相応と言えます。

AGMバッテリー

ドライバッテリーやVRLAとも呼ばれるAGMバッテリーの基本構造は普通の湿式バッテリーと大きな違いはありません。内部の化学変化は同じです。

AGMバッテリーの特徴として、電極板が電解液を含むグラスマットで密着密封されています。中にはゲル状の電解液が使われている鉛バッテリーもあります。

OPTIMA/オプティマバッテリーは陽極と陰極をグラスマットで密着して、バームクーヘンのような内部構造です。

AGMバッテリーは明らかに湿式バッテリーより高性能で、いくつかの特徴があります。

AGMバッテリーは内部抵抗が小さい

AGMバッテリーは電極板の性能が高く、陽極と陰極板の距離が短いのも手伝い、バッテリーの内部抵抗が小さくなります。バッテリーの内部抵抗が小さいということは、瞬間的な放電性能が高くなります。

AGMバッテリーを横倒しにして設置が可能

AGMバッテリーの構造上、横に倒して設置が可能。

AGMバッテリーは振動に強い

AGMバッテリーの構造上、振動に強くタフなバッテリーと言えます。

AGMバッテリーで軽量化が可能

AGMバッテリーは一回り容量が大きな湿式バッテリーと同等の性能を持つため、軽量化が可能です。これが理由で、モータースポーツの世界ではAGMバッテリーがよく使われています。

AGMバッテリーは長寿命

AGMバッテリーは構造上、振動に強く電極板の耐久性が高い特徴があります。

降雪地で外気温が低下する地域や過酷な環境で使われるクロカン4WDにも、AGMバッテリーは最適と言えます。

以上のように、AGMバッテリーは文句無しの性能。ただ、AGMバッテリーはブランドと容量にもよりますけど販売価格は高めです。

なお、AGMバッテリーは鉛バッテリーである以上、サルフェーションの影響は受けます。

カーバッテリーの交換時期

かつて、アイドリングストップ機能が未搭載の車両であれば、バッテリー交換時期の目安は3年ほどでした。ただ、これはあくまで目安。

バッテリーのグレードや車の使用環境によって、バッテリー交換の時期は前後します。車の走行条件によっては、5年ほどは使える場合もありました。

アイドリングストップ機能

ところが今や京都議定書発の世界的なCO2削減という大義名分もあり、多くの自動車にアイドリングストップ機能が標準で搭載されています。

アイドリングストップ搭載車はバッテリーへの負担が大きく、エンジン停止中、メーター照明やカーナビ、オーディオ等の電装品は12Vバッテリーからの電源供給で作動します。

車が発進と停止を繰り返す環境下では、度々エンジンが停止し、スタート時はバッテリーからセルモーターに大きな電流が流れます。

充電制御システム

更に、充電制御システムの搭載車が増加し、カーバッテリーの充電制御が複雑化しました。

かつては、車のオルタネーターが常時発電して、カーバッテリーを満充電状態に保っていました。しかし、これは常にオルタネーターに負荷がかかっている状態のため、無駄な燃料を消費します。

そこで、省燃費技術の1つとして、バッテリーを満充電の手前まで補充電したら充電を停止します。そして、バッテリーが一定のラインまで放電した時点で補充電がスタートします。

要は、チビチビとバッテリーの補充電を繰り返しているわけです。

アイドリングストップと充電制御システムの搭載車はバッテリーにとって、かなり過酷な環境です。

カーバッテリーの短命化

このような背景もあって、アイドリングストップ機能搭載車のバッテリーは使用環境によっては1年半~2年程度で要交換と判断されることもあります。長くても3年ほどではないでしょうか。

しかも、アイドリングストップ搭載車用のバッテリーは高耐久タイプのため、価格が上昇しました。

かつて、軽自動車用のカーバッテリーは5,000円でお釣りがくるものでしたが、今や10,000円前後。

ハイブリッドカー用の12V補機バッテリーが20,000~30,000円。欧州車用のAGMバッテリーは35,000~40,000円ほどが目安。メルセデス・ベンツの車種によっては、もう1つサブバッテリーを搭載しています。

アイドリングストップはCO2削減のため技術であって、ランニングコストを削減するものではありません。

アイドリングストップ機能で多少、燃費が改善されても、バッテリー交換のコストが増大することで、車のランニングコストはむしろ上昇するケースが多いかもしれません。

「アイドリングストップはいらない」と不満を抱いているオーナーは、左手が自動的にアイドリングストップのキャンセルスイッチに伸びているかもしれません。

バッテリーの延命策として、アイドリングストップ機能をキャンセルした方がバッテリーの負荷を軽減できるのは確かです。

カーバッテリーの点検方法

カーバッテリーの性能はバッテリー電圧と電解液の比重値だけでは、はっきりと判断できません。

かつて、ロードテスターと呼ばれるテスターがあり、バッテリーに負荷を与えて低下した電圧からバッテリーを診断する方法がありました。

しかし、より正しいバッテリー診断が求められてきたこともあり、今日ではCCAバッテリーテスターによるバッテリー診断が主流。

バッテリーはいつダウンするか予測が難しいこともあり、整備工場やディーラーで定期的なバッテリー点検を受けることが安心に繋がります。最低1年に1回、できれば、春と秋の2回はバッテリーを点検したいものです。

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